オルトリンデに花束を

今日、入即出やる夫という青年はらしくない事をしようとしていた。
 

腐れ縁であり、幼馴染であり、幼少期から見知った仲である
 

紺野木綿季の誕生日に、豪勢な花束を渡そうとしているのだ。
 

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この切っ掛けは街を歩いていた時の事だ。
 

プレゼントに何を渡そうかと思いながら歩いていた時の話。
 

アイツに何を渡せば満足な答えが返ってくるのかと思った。
 

うまい棒100本あげた時は「プレゼントのセンスが無いね！！」と言われ
 

欲しい物は何かと聞いた時は「女心を分かってないなぁ」と小言を言われ
 

やる夫の誕生日には一番欲しい物を出してくる故に今年こそはと意気込むも
 

毎年迷走を重ね、やる夫としては意地でも喜ばせてやると頭を捻っていた。
 

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姉に相談しては「お前は本当に駄目だな・・・」とため息を吐かれ
 

母に聞いてみては「拗らせ童貞が・・・」と呆れられる。
 

童貞は関係ないだろうが。
 

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頼れる父は「避妊だけはしっかりな。」の一点張り。
 

とりあえず、財布に入っていた夜のお店の名刺とアダルDVDを居間に並べて置いた。
 

今頃は母に誠意を尽くしている時だろう。
 

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ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ{
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三三三i ＝ }｜
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どうしようかと悩み歩いていた時に、目に入ったのが小さな花屋だった。
 

色鮮やかな花が店頭に置かれていて、どれも美しく咲いている。
 

手入れが行き届いているなと思い、何となくで入ってみた。
 

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　　　　　i　: : : 　　 V;|:. :. |:..|　　　　 　 　 / 　 /.:/.: :|{　 ヽ
　　　　　|　: . . 　 　 ヽ :. :.!:..}i>.、　　 ―　 　 ｲ.:∧／ 　 　}
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店内に飾られた花はどれも細部まで丁寧に手入れがされていて、様々な花の香りが心を落ち着かせてくれる。
 

眺めていると、店員に話しかけられた。
 

つい、相談気味に「幼馴染へのプレゼントを捜していたんです。」と振ってみた。
 

聞かれた店員は少しだけ、悩み、考え、どう答えるべきか
 

数秒の沈黙が流れたのち、口を開く。
 

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　　　　　　　　　　 　 ／　　 　 　＼
　　　　　　　　　　 ／　─　 　 ─　＼
　　　　　　　 　 ／ 　 （●） 　（●） 　＼　　　　　　　　　　　　なんで？？？？？？？？？？？？
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　　　　　　　 　 ＼　 　　 ｀⌒´ 　　　,／
　　　　　　　 　 ／　　　 　ー‐　　　　＼
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どこで何にどう至ったのか。
 

沈黙は何だったのか。
 

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　　　　　　　　　　 　 ／　　 　 　＼
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　　　　　　　 　 ／ 　 （●） 　（●） 　＼　　　　　　　　　　　　「」
　 　 　 　 　 　 |　 　 　 （__人__）　　 　 |
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　　　　　　　 　 ／　　　 　ー‐　　　　＼
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店員に言いたい事はごめんなさいとその通りですの二言。
 

やる夫の浅はかな考えは見透かされていて
 

己の行動の薄さを見抜いていた。
 

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┌　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 　 　 　 　 　 ''"ﾟ~￣￣//.:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:. ／
　＼i:i:i:.　´"''～　,,　　　　　　　　　　　　　　　 ,，''^｀　　.:i:i:i:i:i:i⌒ヽ//.:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ｉ／
　 ⌒＼:i:i:i:i:i:i:i:i:.　 ´"''～　,,　　　　　　　　 ／ :i:i:i:i/i:i:i:i:i:i:i:i:i:iヽ:i:i:i:＼￣￣＼=->i:ii:i:＼
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　　　　　　　　　　　　　　　　　|!:i:i:i:i:i:i:i:i＼:i:|ﾞi:i|_jI斗抒x ＼:〉　　　　乂＾少　　:|:i:i:i:i:i!i:i:i:i:i;i:i:|i:i:i:i:i:i|`i:‘,
　　　　　　　　　　　　　　　　　|!:i:i∧:i:i:i:i!ｉ|i＼ 伝　{し:刈i 　 　 　 　 　 　 　 　 |　i:i:i:i|i:i:i:i:i:i:i|ｉ!i:i:i＼i:i:i:‘,　　　　　　　　素直になっても良いと思うんです。
　　　　　　　　　　　　　　　　　|ｉ〃ゞヽ:i:i:i|!i:i:i:i ＼ゞV_沙ﾞ　`　　　　　　　　　　 |:i:i:i:i:i|i:i:i:ii:i:i|i:i:i　|　 ＼i:‘,
　　　　　　　　　　　　　　　　　ｌ　　|`ヽ＼:i|i:i:i:i:i: }i.　　　　　　　　　　　　　　　 :|!:i:i:i:i|i:i:i:i:i:i:i|ｉｌi:i:i　　　　　　　　　　　　  目を瞑って考えてみてください。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　|i:i:|i:i:i:i:ﾟ＼i:i:i:い 　 　 　 　 　 __／　　 　 　 |i:i:i:i,ｌi:i:i:i:i:i:i|ｌi:i:i:/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |:i:i!ｌ:i:i:i:i:`ｉ!i:i:| 圦　　 　 　 ￣　 　 　 　 　 .小 i,/;|i:i:i:i:i:i|ｌi:i:i:|　　　　　 　 　 　 　 　 その子の事をどう想ってるんですか？
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　j:i:i〃l:i:i:i:i:i:|i:i:i:i:|i心、　　　　　　　　　　 ／　　i:iヽ|i:i:i:i:i:i|!i:i:i:|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　V　　|:i:i:i:i:i:||i:i:i:| ⌒〕iト　　　　　　 　 イ √　　l:i|:i:i:ii:i;;i|　ヽ|
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店員から投げかけられた言葉は、確信を突く台詞ばかりであった。
 

彼女の事をどう想ってるのか？どういう関係なのか？本心は？
 

自分に問い質し、考え、どう想っているかを整理する。
 

最後に店員の後押しを受け、花束の注文をする。
 

急な注文に嫌な顔一つせず「頑張ってくださいね」と予算内で豪勢な花束を渡してくれた。
 

そして現在へと至る。
 

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　　　　 　 　 ／　　 　 u.＼
　　　　 　 ／ー‐-:::::::::::-‐' ＼
　 　 　 ／ 　 t　 j:::::::ｨ　 ｯ 　 ＼　　　　　　　　　　　　　えーっと、ノ・・・いや。
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.　　　　＼　 　 　 ｀こ´　　 　 ／
　 　 　 ／　　　 　　　　　u　.＼
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慣れた道を通り、見知った家のチャイムを押す。
 

玄関を開けに来た幼馴染はやる夫の顔と花束を見て驚く。
 

照れ隠しの言葉を押し殺し、どう言えば良いかを考える。
 

　　　　　　　　　　 ,　 -　──　 、
　　　　 　 　 　 ／　　　　　　　 　＼
.　　　　　　　 /　　　 　 ー- ､ 　　　ヽ
　　　　　 　 /ノ　　　　　　　 　　し 　 |　　　　　　　いつもありがとう、ユウキ。
　　 　 　 　 |　　　　　　（ー‐）　 　 　 |
　　 　 　 　 |（ ● ）　　　　　〃　　　 l　 　 　 　 　 お誕生日おめでとう。
　　 　 　 　 |〃　　　　　　,　　　　　 /
　　　　　　, ﾍ 　 （_ノ｀ー'　　　 　 ／　　　　　　　　これからもよろしく。
.　　　　,／ 　　＞-ﾍ-ー― 　 ＜＿
　　,.. '´　　 ／ｰ:::'７. 　|o 　　,／::::／￣＼
r'"　　 　 ィ 　　 /│ 　| 　　/:::::／　 〃⌒ヽ、
|　　　 ／ |　　 /　.|　　|o　/:::::/　　/　　　　　＼
ゝ--＜!　 l　　/:::::::￣￣￣:::::/　　 l　　　　 　　　ヽ
　　　　ヽ__>-/::::::::::::::::::::::::::::::|　　　|　　　 　　　　 ﾉ
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木綿季に対し思っている事や感謝、素直な気持ちをぶつけた。
 

変に飾ろうとか格好付けようとかせずに
 

顔を赤くしながら、何時もは言えない言葉を振り絞る。
 

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　　　　　　　 　 　 .::::::ｨ::::::/|:::;'::/:::/_;::::/　　 　ﾏ::l ﾏ:::;ﾏ:!:::l:::::::::::::l:::::.
　　　　 　 　 　 ／イ　!::::/::l:::{/´:/　!:/ヽ　　 　 ﾏ!-}:::;､';:l:::l:::::::::::::l:i:::ﾑ
　　 　 　 　 　 '´ 　 __::::::{::::l::i!　|'　 |!_　　　　 　 i!　}:;'　 ;:l::!:::::::::::;'::|丶ﾑ
　　　　　　　　　　　｀i!:::::!::::l::{　r=＝ミ､　　　 　 ＿ '　　 }::l:l:::::::::;::: |　　`ヽ
　 　 　 　 　 　 　 　 {::::::|::: l::!　　　　　　　　　　'¨¨¨ﾐ:.､ i!:!:l::::::::;::::::|　　　　　　　　　　ううん。
　 　 　 　 　 　 　 　 i!:::::|:::〈:ﾑ　／/／ 　 ,　　　　 　 　 ﾘ !:l:::::::;>ヽ:!
　　 　 　 　 　 　 　 ,::i:::::|:::::ii:ト.　　　　　　　　／/／ 　,'' i!:l::::::;':::´:::l　　 　 　 　 　 　 嬉しいよ。
　　　 　 　 　 　 　 ,::::l:::::|:::::l:i!::::.　　　r ‐　-　,　　 　 .:::'::i!::::: /::::l::|:::.
　　　　　　　　　　.:::/:l:::::|::::i! :::::＞.､　 `　-　'　　 　.ｲ:::::::i!::::/:::::::l::i!:::.
　　　　　　　　　 /:/;:::ﾏ::|::::i＜ﾆニ＞i .､　 _..｡s≦ニ＞｡/:::/::::::::::l:::l::;::.
　 　 　 　 　 　 ///::: -ﾏ|::::l-ﾏ＞-‐/ﾄ:...._ _..｡s=ﾄ｡ヽ イ::::/:::::::::::::|:::l::.ﾏ,
　　　　　　　　/　,.'　　　ﾏ:::l　//////`ー'ヽ--/／　 /:: /｀¨¨¨¨ ＜l:::.丶
　　　　　　　　　 {　 　 　 ﾏ:l ////_///_////／　　 /::/　　　　　　 ﾟ｡::.　ヽ
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笑われたり、弄られたりからかわれた方が都合が良かった。
 

だが、木綿季は花束を大事そうに抱え笑う。
 

一番良い笑顔で笑うのだ。
 

この笑顔と、言葉が欲しかった。
 

胸の奥の鼓動を抑え、冷静さを保とうとしても
 

気持ち悪く見えているだろう笑みは抑えが利かなかった。
 

　　　　　　　　　＿＿＿
　　　　　, 　´ 　 　 　　 　＼
　　　 ／ 　 　 　 　 　 　　　ヽ
　　 ./ 　 -- ．.,_　　　　 　 ＿‘.
　　,' 　 　 ＿＿ 　　　　__´＿　‘.　　　　　　　　　い、いや、そうだけどそうじゃなくて・・・
　 ， 　　　￣￣ 　 　 　 ￣￣　 ‘.
　 {　∪ "'　 　 　 　 　 　 　　 ､､ }　　　　　 　 　 サービスしてくれたし
　 ヽ 　　　　　　ゝ-‐ ｰ- '　 　 　'
　　 ＼ 　 　 　 　 　 　　　､ <＿　　　　　　　　　 年に一回のお祝いくらいは別に。
　　　　＞,7/1　　_　,r' ｀'rv////
　　　〈/////」 　　V　／　l///＼
　　　__//////ﾝ　〈,r' 　　 _〉Y// ﾄ、
　　{//＼｀¨7 o⌒f ＼,r'´ ､ゝ///|.:.ヽ
　　j,////｀7'__`] !_　 ! Y´ `　＼,r':､<
　　|,//////∨　ヽ_ヽ.{ {ヽﾄ　j′∨　ヽ __
　　|//////У　　 ヽヽ} } ヽ ｨ､　,ﾍ | ｀fヽ ヽ
　　|,∧_/z＜/〉 　_ lT　= ‐'ー　´ 　|　|　l　}
　　j_/_/＞　´ﾞ´　　| l　二 　　　　　|　| / ,r'
　　　￣ヽ 　　　　　ヽヽ.二　　 ． ^└ `´
　　　　　　＼　_＿　､ }.} ＞´
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少し間が空き、お互いにどう切り出せば良いのか計りかねていた。
 

このまま解散したい気分ではなく、まだ話を続けたい空気で
 

それをどう言葉に表して良いのか迷っている。
 

お互いに意識していた。
 

やる夫が口を開こうとした時――――
 

　　　　 　 　 　 ＿＿＿_
　　　　 　 　 ／　　 　 u.＼
　　　　 　 ／ー‐-:::::::::::-‐' ＼
　 　 　 ／ 　 t　 j:::::::ｨ　 ｯ 　 ＼　　　　　　　おじさんこんにちは・・・
.　　 　 |. u 　 ｀¨､__,､__,¨´　　　 |
.　　　　＼　 　 　 ｀こ´　　 　 ／
　 　 　 ／　　　 　　　　　u　.＼
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人を殺めて居そうな面を浮かべる木綿季の父が最高の笑顔でやる夫の背後に立っていた。
 

.　　　　　　 　 ／/::/:/:::/:::::／:_:_:∠:::::}i､　　|
.　　　　　 　 /ｌ:{::{::::{:iレｆ一'⌒ヽ／}｢ヾ::::}i､ く
　　　 　 　 /{::::{_j;ノ⌒￣＼ ／jﾚ‐┼　＼::}i､ ヽ
.　　 　 　 ∧:∨ｌ|　　Ｕ　 ／　/j　　{,ィ　　ヾ{＼ }
　　　　／[:::rく　|　　　／ ＿/　 ／i{/ ミ　　∨ /
. 　 　 {／{:ﾌ /ー‐一/＼ 　 i　==彳＼_　　　∨　　　　　　やだー！！
　　　/|　 {ｆ /ｌ ／￣oﾊ　ﾊ　＼￣}| 　｛(_　Ｕ/
　　　l│ 人　 |::::::::::::::}}　}:ﾊ　＿　__　 ヾ}　く　　　　　　　  儂の脳が破壊される！！
　　　 ／　「ﾊ 乂＿_／ 人_{__／ }liﾄn＼ |　　＼
　　　　　　| { ∨ 　 　 / ｨjif{＿／￣＼　|__　}ｌｌｉ}　　　　　  寝取り反対！儂が先に好きだったのに！
　　　　　 人＼‘, U　/ jｉfく／＼／＼∧　　 |ｌｉﾘ　 　 　 　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　娘に嫌われますよ？＞
　 　 __／　 }ﾄ､__} 　 ＼　∨/////〉〉/∧　　 /
.　　　 　 　 |l::::::::Ｖｌｉ　し　 ∨///〈〈/＼∧／
　　　　 __,ノﾘ:::::::::ｉ｀ﾄN{ ∨＼／＼/　　＿〉
　'⌒ーｧ一'::::::::::::|:ﾉ:::::ﾄN{、└‐　ご￣ ＜
　／￣:::::::::::::::::／:::::::::{　 ﾄNｌ{、　　il川川ｌ＼
　::::::::::::::::::::::／:::::::::::::::）　|　 ﾄN{川川川ﾚｲ´}
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　￣):::::___/ ／:／{:::（＼　 　 　 ＼　 　 ＼/
　厂:／　　(:::::( 　 ＼:＼＼　 　 　 ＼　　￣￣|＼
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呆れた表情を浮かべ、ここは任せてと追い払う仕草でやる夫と木綿季を追い出す木綿季の母。
 

子供のように泣き叫んで取り乱す父を見て恥ずかしそうに頭を抱える木綿季を
 

やる夫が手を取り、再び街がある道へと駆け出す。
 

明るく楽しそうな笑顔を浮かべる幼馴染の顔を見て
 

お互いに手を繋いで駆け出した。
 

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もう少しだけ、もう少しだけ、誕生日は続く。
 

夕焼けが二人を見守っていた。